オーボエ奏者・藤井貴宏 オフィシャルブログ Grüß Gott aus Bayern!

音楽&ビールの街・ドイツはミュンヘンから、再びバイエルンの田舎にお引っ越し♪自然の中で生活しながら音楽や日々の話題を中心に掲載中です☆

昨日、約3週間振りに兵庫に戻ってまいりました♪

昨日、約3週間振りに兵庫に戻ってまいりました♪
一昨日あたりからついに腰が痛み始め、今日はかなりの痛さ(^^;)さすがに体が悲鳴をあげているようです。。。夜に予約していたいつもお世話になっている「藤村カイロプラクティック」に急きょ、夕方に変更してもらい治療していただきました。今日も入念にかつ丁寧な先生。いつも感謝しております(^^)自分をメンテナンスしていく、大事なことだなと最近つくづく思うこのごろです。「練習したい」と無性に思うのですが、少しお休みしなきゃみたいです。。。皆さんも季節の変わり目、ご自愛くださいませ♪


9月12日・ドイツ5日目


今日は今まで自分が生きてきた中でもっとも大きな「カルチャーショック」という名のものを受けた日に間違いない。
昨夜は珍しく雷が鳴り強めの雨が降っていた。朝起きて窓を開けてみると「秋」を実感する空気に変わり、肌寒いほどの気温になっていた。
朝はいつもどおり静かにおいしい朝ごはんを食べ、散歩に出かける。ハンスは今頃ミュンヘン空港までモーリス・ブルグ氏を迎えに行っているんだろうな、なんていうことをちらほら考えながら歩き、宿に戻る。基礎練習を開始。よく寝たせいか昨日のハンスのレッスンのおかげか、また一皮剝けたんじゃないか、と思うくらい楽器が楽に吹けるようになってちょっと嬉しくなってみた。午前中いっぱい吹き、また昼寝。と30分もしないうちに向かいの部屋からオーボエの音が。いよいよ皆集まってきたんだなと思い不安と期待が交錯する。2時に集合と言われていたので、会場の学校に向かう。その途中に白髪の眼鏡をかけた、少しよれよれの白いジャケットを着た・・・ついにモーリス・ブルグをこの目で見た瞬間だ、その時は言葉がでなかったが、学校に行くと数名のオーボエ吹きとハンス、そしてブルグ氏がいた。早速挨拶すると、とても気さくなそしてチャーミングなお方だ。そして今回の講習会と明日のミサでの演奏会についての説明が行われる。その時にとんでもない言葉がハンスから飛び出した。「ミヒャエルハイドンのミサ曲は1st/Obsoloはモーリス、そして2nd/Obsoloはタカヒロ」。。。ええええええええええええ???????????????モーリス・ブルグ氏といきなりソロ(*。*)この状況に絶句。。するとモーリス氏が「ガッツポーズ」。。。練習は今晩8時から。。いきなりとんでもないことに。だが今日はそれだけで終わらなかった、、、、さらに「タカヒロは17日に帰ってしまうから、モーリスと相談してレッスンを早めに組んで」とハンスが言うとすかさず氏が「5時からこの場所でやろう」というのです、笑顔で。。。「何をする?」と聞かれたので「今まで何年もあなたに会いたかったし、日本でもマスタークラスのチャンスがあったけど常に予定が合わなかった。今日は本当に幸せだ。ぜひクープランのコンセールをみていただきたい」と言うと「それはいい、楽しみにしてるよ」と。いきなり今日、レッスンのチャンスが訪れたのだ。一度宿に戻ってみると緊張が増しているのが手に取るようにわかる。カフェラテを飲み、少し落ち着かせ、このありがたい状況を奥さまに電話で短く伝え、そしていざ会場へ。レッスン会場では誰かがマルティヌーをさらっている。まだ練習したことがない、やらなくてはいけない作品のひとつ。。難しそうだなと思っていると、ドアがあき「レッスンがあるんですって?さぁさぁどうぞ」と女性が現れる。オランダ人の彼女そして隣の部屋からも男性が現れオランダ人とのこと。「私たちも早く帰ってしまうからレッスンをしてほしいのよ」とのこと。そんな話をしているといよいよモーリス・ブルグ氏が歌を歌いながら登場。



そして何人もの受講生が自分を囲んで聴講、話には聞くけど実際ヨーロッパでは初めての経験。ドイツ、オランダ、トルコ、スペイン、ギリシャ、スイス、本当にいろいろな国の人がいる。そんな中であえてクープランを今回選んだ理由はもちろん、氏に習えるからだ。この曲は長年やりたいと思っていたけどフランスものがあまり得意でない自分にとっては鬼門とも思える曲、だからこそ「本物」を直に学んでみたかったのだ。今回の受講生でクープランをもってきたのは自分だけ。数々のブルグ弟子が「クープランは本当に厳しいけど素晴らしい」と言っていた。どんなものなのか・・・彼が音出しとともに一曲目を吹き始めた。。。体に強い衝撃と「これは大変だ、すごすぎる」という今まで感じたことのないような「手が届くかわからない」というくらい高い音楽が奏でられだした。氏はそのまま一曲をいきなり通して「大きな音はいらない、プリサイズされたそしてテンポがよどみなく、一番大事なのはアーティキュレーションだ」と言い放った。正直音を出すのが怖くなった。最初のアウフタクト、装飾、音符のとらえ方、すべてにおいて完成された納得してしまう音楽をたった今した人の前で同じものを吹く。緊張とかではなく、怖さがあった。そして吹き始めると、案の定、アウフタクトから次への♪のことについて言われる。そして一度通す。もう数え切れないほどのことを言われ続け、体で手で自分に「こうだ」と氏が迫ってくる。確かにそうだ、そうだけどすぐにできない。。。それでも最大限努力し続ける。この2分ほどの曲で30分以上が経過、「もしかしたら呆れてしまったかな」と思うと「アルマンド」と。そう次の曲。すごいすごすぎる、なんだこのパワー勢い、音楽の力、流れ、その中にある美しさ。自分が描いていたものでは追いつかないほど「スピーディー」だ。おそらくもう70歳くらいなはず、けれどもとてもじゃないけどそうは思えない。すごい、とにかくすごい。続いて自分が吹くと一か所捉まった。トリルだ。苦手なもの。「なんでそんなにゆっくりなんだ、もっとパッパッと、ハイハイ」自分の何回りも年の離れた人に追い付かない、というか今までの自分の中にそういうトリルの種類がなかったのだ。何度も何度も。結局70パーセント程度しかできなかった、その場でできない、ということが何年振りかに起こりそれもショックだった。この勢いのある曲をレッスンしていただきすでに一時間経過。ふーっと息をついたら「一番重要なサラバンド、厳格な3拍子だ」と言われ、さらにレッスンが続く。最初は英語のレッスンだったのにほとんどわからないフランス語を「雰囲気」で軽く理解してしまっていたのかどんどんフランス語になる。熱くあつく語るそして吹きまくる。「フレーズの終点をもっと厳格に思いなさい。それを見せるんだ。カデンツァ、これも見せなくてはならない」。本当ならすごくきつい曲なはずなのに、きついとかいう問題ではなく必死に吹いていた。そして彼独特のフレーズ内での「ニュアンス」を要求される、ものすごく高度になってきた。。。でもこんなに「はっ」と何十回も思わされたのは間違いなく今日が初めてだ。そして1時間半が経ったところでようやく終了。「ありがとう、続きはまた明日」と。フランス語がわかれば、と本当に悔しかったけれど、こんなにも音楽を厳しくそしてイキイキと感じている音楽家がいることに本当にカルチャーショックを受けた。あり得ないほどのポジティブさ。自分の次のオランダ人の彼女のマルティヌーの時は暗譜で、しかも若々しいJazzyな雰囲気たっぷりでしかし、完璧なフィンガリングとクープランとはべつものの強烈なフォルテッシモ・・・いったいこの人は本当はいくつなのだろうかと疑ってしまうほど。すごかった。けれど、クープランの奏法に対する考え方は彼の中に特に特別にあることも同時に感じた。厳しいけれどあと4回はレッスンがほぼ毎日あるという。。どこまでできるのか頑張ってみたいと本当に思った。


夜は氏とのソロ、これまた幸せな時間だった。ハンスが「とてもよく合っているよ、とても綺麗だから」と言ってくれた。でもそんなことよりとにかく、今日の彼の姿、演奏、人間性、すべてに対して宿に帰ってからもしばらく放心状態だった。いまこうして書き綴っているのもその興奮のあらわれ。本当に人生覆されそうなカルチャーショックだった。今回はもちろん、やはりヨーロッパで修業したいと強く強く感じた一日だった。。


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