オーボエ奏者・藤井貴宏 オフィシャルブログ Grüß Gott aus Bayern!

音楽&ビールの街・ドイツはミュンヘンから、再びバイエルンの田舎にお引っ越し♪自然の中で生活しながら音楽や日々の話題を中心に掲載中です☆

葬送行進曲

今日も朝からリハーサルがありました。
久々のベートーヴェン、具合が悪いとはいいつつ、ある意味楽しんで出来ているところに「少し成長したのかな?」なんて思いながら演奏しています。しかし、大曲です。昨日も書きましたが、、、交響曲の第2番からは想像もつかないほどの「発展・進化」した第3番。この2楽章には「葬送行進曲」という名前がついています。
この曲には少々思い入れがあります。
3年ほど前でしょうか、チェコの東、フカロバルディという地方都市の古城に、レッスンをしていただいていたチェコフィル首席のJ・ブロジュコヴァ氏他、アフラートゥスクインテットの演奏会を聴きに行ったんです。夏だったので夜8時を過ぎてもまだ昼間といった感じだったのですが、気づけばプラハ行きの電車が夜中までないではないですか・・・先生は「私たちはホテルに泊まっていくから」とあっさり言われてしまし、一人どうしようか考えました。そのときふと「逆方面はポーランドだっけ」と思いだし、ガイドブイックをちらり。。。「アウシュビッツ」と心の中で叫び、呼ばれるように電車に乗り込みました。が・・・この路線、チェコに住んでいた先輩から「世界でも有数の治安の悪い路線だから」と言われていたまさにその路線だったのです確かに変な怪しい人が沢山。。。デッキまで満員のこの電車、もちろん朝まで一睡もせずにデッキにいました。怖かっですよ翌朝、ポーランドの南、クラコフに到着、朝の気持ちよい天気の中観光をすませ、いざアウシュビッツへ、、、。アジア人がまったくと言っていいほどいない。。。さっきまで沢山いたはずなのに。いるのは私とは明らかに違う人種の人たちばかり。電車は丘を駆け上がっていくように古い電車らしい音をたてながら走ります。さっきまでの快晴が嘘のような曇りになり、終点のオシフェンチウムについた頃にはどしゃ降りの雷ごろごろさすがの西洋人も皆このシチュエーションに少々ビビリ気味
駅からは専用バスに乗ります。降ろされたところから少々歩くと見えました、「ARBEIT MACHT FREI]no文字・ドイツ語で「働けば自由になれる」の有名な門です。とうとうアウシュビッツ収容所に着いたのです。赤レンガの立ち並ぶバラックは異様な光景そのもの。もちろんその恐ろしい歴史を語るにはあまりに十分すぎる遺産が沢山、しかもリアルに残されているのです。
その施設に入る前に皆ある映像を見せさせられるのです。
ヒトラー率いるドイツ軍がユダヤ人たちを収容し、この施設で何をしていたかの映像です。言葉は無く、映像とともにかかる音楽がそう、この交響曲第3番の2楽章なのです。恐ろしい程ゆっくりなテンポ、恐らくベルリンフィル×フルトヴェングラーの演奏なのですが、流れてくる映像との効果は言葉では現すことが難しいほどにマッチしているのです。。。ベートヴェンがこんなことに使われるとは思ってもいなかったはずですが。小さな子供たちがおびえる目で電車に乗り込み、大人たちは軽蔑の目で軍隊を見る。しかし抵抗することなどもはや出来ずに、髪を切られ身体検査を受け、働かされるだけ働かせられ、そして毒ガス室へ・・・無造作に何千という遺体がもののように投げ込まれる。日本では到底見ることが出来ないような映像が、恐ろしくゆっくりなテンポの「葬送行進曲」によって映されます。約30分ほどでしょうか、言葉も出ずそこに居る人全てが泣いています。あの光景、そして音楽によって訴えかけられたあの時間今でも深く心の中に刻まれています。

何か、気持ちの中に強いものを持って明日・明後日と2楽章を演奏したいと思います。
アウシュビッツ、もう一度行かなくては。。。

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写真は去年のデュッセルドルフ(ドイツ)での散歩のときの一枚。気持ちの良い写真です